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    縁石に上る彼女。

    • 2012.05.01 Tuesday
    • 09:50

    二人で歩いていると、ひょいと彼女は縁石ブロックに上る時がある。
    「危ないから降りなさい」と言うと、大人しく降りる。
    しばらく話しながら歩いていると、また、ふとした時にひょいと縁石ブロックに上る。
    「子供じゃないんだから」と怒ると、また大人しくひょいと降りる。

    さすがに昼、他の人の目がある時はやらないが、夜二人でコンビニに行ったりする時は、かなりの確実で縁石ブロックに上る。

    「何やねん、お前。子供がマネしたら危ないやろ」
    「はい」

    また、大人しく降りる。
    しかしその5分後、また縁石ブロックに上る。

    「あのなぁ、お前…」

    さすがにちゃんと注意しようと思った。
    僕は彼女が怪我をするのが心配なだけなのだ。こいつの足もとはいつ縺れるか分からない。
    彼女はバツが悪そうに、縁石から降りた。
    ぽってりとしたバレエシューズのような靴のヒールが、コンクリートにコツリと音を立てた。
    「…いつも、いつの間にか上ってるんだよね。クセかな。自覚ないんだよね」
    「知らんわ。とにかく、縁石上るの禁止」
    「…うん。気をつける」

    …ちょっと厳しく言い過ぎただろうか。いや、怪我をしてからでは遅いのだ。
    「ほら、行くぞ」
    僕は一足先に歩き出した。
    「…じゃあ、ちゃんと、手…」
    ひとつひとつの言葉を区切りながら、彼女が背中越しに呟く。
    車の走る音で最後の方は聞き取れなかったが、彼女が言いたかったのは、おそらく…。

    そっと手を差し出してみる。
    彼女の顔が、ぱっと華やぐ。しかしすぐ、それを悟られまいと、僕から視線を逸らす。
    俯きながらも、ぎゅっと手を握ってくる。

    「何やお前。こんな所に上りたがるなんて、猫みたいやの」
    僕の言葉に、彼女はちょっとだけ照れくさそうに微笑んだ。

    大切な人が遠いどこかで迷子になってしまわぬように、ちゃんと手を繋いでいる事も、僕の役目なのだ。

    幸せだなぁ、妄想だけど。

    引きこもる彼女

    • 2012.04.28 Saturday
    • 00:54

    世間はゴールデンウィークだ。

    人ごみが苦手な僕は、この時期いつもげんなりしてしまう。
    しかし、あいつの事だから「どこか連れてけ」と騒ぐんだろうな。
    ここ最近仕事が忙しくて、なかなか一緒にいられなかった。
    電話も仕事の片手間で済ませてしまう日もあったし、彼女が部屋に遊びに来ても僕はずっとパソコンと睨めっこしていた日もあった。
    今年は腹を括って、彼女をどこかに連れて行ってやろう。
    そう決めた。

    「なあ、ゴールデンウィークどこ行く?」

    近所の本屋で買ってきた行楽雑誌を広げ、彼女に話しかける。
    無難に温泉か、ちょっと若者ぶって遊園地か、それとも…。
    「どこにも行かない」
    読んでいた本から目を逸らすことなく、彼女がそう言った。

    僕はビックリした。
    と同時に、最近ほったらかしにしていた事、もしかしてめっちゃくちゃ怒ってるのか?と不安になった。

    「何でよ。ほら、行きたがってた温泉もこの雑誌に載っとるよ。連れて行ってやるから」
    「どこにも行かないってば」
    面倒くさそうに、彼女が本のページをめくる。

    やっぱり怒ってるのか?
    とりあえずコンビニで甘いものでも買って来てご機嫌をとらねば、と思った矢先、彼女が頬を膨らませてこう呟いた。

    「ゴールデンウィークは、ずっと家にいる」

    「え?」
    「DVD借りて、見て、本買って読んで、コーヒー淹れて、二人でスーパー行って買い物して、二人で美味しいの作って、お酒もおうちで飲んで、一緒に寝る。次の日、朝遅く起きて、ゆっくり支度して、近所のドトールで朝ごはん食べて、DVD返してまた借りて、家で見る」
    「…そんなんでええんか?ここ最近一緒におれんかったし、我侭言ってもええんやで?」
    「だからだよ。…最近一緒じゃなかったから、だから…」

    照れているのか、彼女が顔を本に押し付けた。
    「どこかに行かなくてもいいよ。一緒だったら」

    彼女と一緒なら、借りて来るDVDの内容がイマイチでも、きっと楽しくみられるんだろうと思った。

    幸せだなぁ。妄想だけど。

    つむじを守る彼女。

    • 2012.03.04 Sunday
    • 22:26
    彼女のつむじはまん丸に渦巻いていてとても可愛らしい。
    後ろから見ていると、人差し指で突付きたくなるようなつむじ。
    我慢できなくなり、ツン、と突付くと、彼女はすぐに振り返り、僕の手を叩き落とす。

    「ハゲるでしょ!やめて!」

    と真剣に僕を睨む。

    …つむじを押すとハゲるのだろうか。
    ネットで調べても、そんな事はどこにも載ってない。
    こいつは誰からそんな情報を仕入れたのだろうか。

    しかし、つむじを押しても怒られない方法がある。

    僕は無意味に背が高いせいもあり、何となく自分のアゴを彼女のつむじに乗せる事が多い。
    ぎゅう、と、アゴで彼女のつむじを押してみる。
    彼女は動かない。

    「これは怒らないの」
    「うん」
    「何で。今俺、つむじ押しとるよ。ハゲるよ」

    「これは…マッサージだからいいの」

    ふふ、と笑う彼女。
    彼女の柔らかい髪の毛からは、僕と同じシャンプーの香りがした。

    幸せだなぁ、妄想だけど。

    賢い彼女。

    • 2011.08.17 Wednesday
    • 02:21
    最近、自分でインクの色を選べる3色ボールペンが売られているのを見る。
    文房具好きの血が騒ぎ、つい売り場の前で立ち止まってしまった。

    でも、数あるインクの中からいざ3色選ぶとなると、悩んでしまう。
    黒と、赤と、青と…。
    結局、何の面白みもない3色ボールペンになってしまった。

    「いいな、いいな。私も買おうかな」

    彼女が後ろから覗き込む。
    女の子だから、やはりピンクとか選ぶのかな。それとも、淡いパステルカラーで揃えるのかもしれない。
    そんな事を考えながら、彼女がインクの色を選んでいるのを微笑ましく見ていると。

    彼女が選んだのは、なんと3色とも黒だった。

    「え、何それ」
    「何ってなに?」
    「3つとも黒?」
    「だって、黒ばっかり使うじゃん」
     
    3色ボールペンのインクをすべて黒でそろえる。
    彼女は逆に「何が不思議なの?」といった顔で僕を見る。

    「…その発想は、俺にはなかったわ」

    僕の彼女は賢いのか、それともアレなのか。
    レジに並ぶ彼女の後姿を見て、こいつはもっと色んな裏技を持っているのかもしれないと思った。

    そろそろ「買い物疲れた」と駄々をこねはじめる頃だ。
    機嫌が悪くなる前に、どこかでゆっくりお茶にしよう。
    そこで聞くんだ。
    多分僕よりは賢い、彼女の話を。

    幸せだなぁ、妄想だけど。

    笑い声が可愛い彼女。

    • 2011.08.16 Tuesday
    • 01:47

    彼女は他の女の子と比べると、あまり声を出して笑わないタイプのようだ。
    性格が男前なのもあるが、どちらかと言えば女の子達が笑っているを微笑んで見ているタイプだ。

    でも、彼女が笑い声をあげるスイッチがあるのを、僕は知っている。

    わき腹だ。
    わき腹を指で突付くだけで、彼女は可愛い笑い声をあげる。
    その声が聞きたくて、僕はいつも彼女のわき腹をつつく。
    一度やりすぎて本気でキレられ、殴られた時がある。強烈なボディーブロー。しくしくとした痛みが次の日まで続いた。
    あの日から、出来るだけやりすぎないようにしている。
    怒られるちょっと手前でやめるようにしている。それならば、ただの恋人達のじゃれ合いで済むのだ。

    本を読んでいる彼女にそっと近づき、わき腹を突付く。
    彼女は最初ムッとした顔をするが、もう一度突付くと「キャッキャ」という子供のような声をあげる。
    「うふふ」とか「あはは」とかじゃない、赤ちゃんが喜んでいるような声。

    「やめてよ、また殴られたいの?」
    「そやかて、その声が聞きたいんやもん」
    「やめろって。今、本読んでるんだから」
    「ええよ、読んでて」
    「そんなんされて、読めるかよ…」

    彼女は本を置き、ちょっとふくれた顔で僕を見た。

    「そんな事しなくても、私が笑ってられるようにして」

    とりあえず、今から近くのコンビニに生クリームがたっぷりのったプリンでも買いに走ろうと思う。
    あの可愛い笑顔を絶やす事のないように。

    幸せだなぁ、妄想だけど。

    ヘッドフォンをつける彼女。

    • 2011.08.15 Monday
    • 00:45
    歩くのは嫌いなくせに、 電車に乗るのが好きな彼女。
    「家まで送っていく」と言う僕の申し出を断り、よく最寄の駅で車を降りる事がある。
    昨今のニュースや痴漢の事件なんかを新聞やニュースで目にした日は不安になるので、出来れば家の前まで送らせて欲しいのだが、今日も彼女は「駅でおろして」と言う。

    「女性専用車両乗れよ」
    「うん」
    「怪しい奴には近づくなよ」
    「分かった」
    「不審物は絶対触るなよ」
    「うるせえ」

    彼女は「またね」と言って、車のドアを閉める。
    一度振り返り、手を振る。
    僕も彼女に手を振る。

    彼女は駅のホームへ行く途中、鞄から細身のヘッドフォンを取り出し、耳に当てる。
    僕は、彼女がヘッドフォンをつける仕草が好きだ。
    さっきまで繋いでいた手のひらが、器用にコードを手繰り寄せる。
    あそこからは、一体どんな音楽が流れているのだろう。
    僕はいつも彼女の姿が見えなくなるまで、車の中からぼーっと彼女を見ている。

    ふと、彼女が振り返った。
    細いコードが揺れた。

    『またね』

    彼女の唇が、そう動いた。そしてちょっと微笑んだ。

    彼女が家に無事に帰るまで、どうかその音楽が途切れる事のないように。

    幸せだなぁ。妄想だけど。

    いなり寿司をつくる彼女。

    • 2011.06.29 Wednesday
    • 00:00
    彼女は料理が得意だ。
    自分が美味しいもの食べたいから得意になったと言っていたが、多分お母さんが料理上手なんだと思う。

    で、絶品なのがいなり寿司。
    油揚げを甘く煮るところから始まる。
    その優しいコトコトという音と、台所に広がる甘い香りで、僕の口の中は唾液でいっぱいになる。

    西の人間なんで、最初は「うわー。油揚げそんなに甘く煮るとかないわー」とか言ってたけど、ひとつ食べてみるとその美味しさに言葉をなくしてしまった。

    ゴマとかコゴミとかレンコンとかタマゴとか色々入ってる。わさび味とかウメ味もある。山菜が入ってるのもある。全然あきない。彼女のいなり寿司なら何個でも食べれる。

    この絶品いなり寿司のせいで、僕は何人ものライバル達と戦ってきた。
    彼女が山盛りのいなり寿司を仲間内に差し入れてくれる事があるのだ。
    そのたび、男はみんな彼女のことが好きになる。またこのいなり寿司を食べたいと思う。
    男は手の込んだ料理より、こういうものに弱いのだ。

    いなり寿司をつくる時は絶対呼べと言ってる男もいる。
    自分で材料を買ってきて、いなり寿司を作ってくれと彼女に頼み込んだヤツもいる。
    そのたびに彼女は「こんなに簡単なもの食べたがるなんて変なの」といいながら、せっせと作る。
    宅飲みした日は、僕の友人にタッパーでお土産に持たせる。お母ちゃんか、お前は。
    でも、これは男は惚れる。間違いなく惚れる。

    彼女はひょいひょいと簡単そうに油揚げに寿司飯を詰めていく。みんな同じカタチに出来上がっていく。僕も真似してひとつ詰めて見たけれど、すぐに油揚げが破けてしまった。
    ため息をつく彼女。「邪魔しないで」と台所から追い出されてしまった。

    大きなお皿に色んな種類のいなり寿司を積み上げて、すまし汁と一緒に頂く。

    「いただきます」

    いなり寿司に手を伸ばす僕を見て、彼女が笑う。

    「それ、いつもやるね」
    「それって?」
    「お箸を指にはさんで、手と手を合わせていただきますってやつ」
    「ああ…、クセかな。変?」
    「ううん」

    彼女の僕の真似をして、ご飯の前で手と手を合わせる。

    「だから、また作ってあげたくなっちゃう」

    このいなり寿司を制限なく食べれる僕は、きっと世界一幸せ者だ。
    そう思った。

    幸せだなぁ。妄想だけど。

    お祭りに行きたい彼女。

    • 2011.06.11 Saturday
    • 22:43
     この時期になると、情報誌に夏祭りの日時が掲載され始める。
    正直、はんなりした地方で育った僕は、こっちの祭りのテンションが苦手だった。
    若者達向けというか、不埒な恋人達向けというか。
    しかし、彼女はせっせとスケジュール帳に祭りの日時を書き写している。

    去年もこれで喧嘩した。
    僕が祭りには行きたくないと言ったからだ。
    情緒がない祭りなんて、全然楽しくない。ただ疲れるだけ。あんなので浮かれるのは10代のカップルだけだろ?そう言ったら引っ掻かれたのを覚えている。

    結局無理やり連れて行かれたが、車は渋滞して動かないし、屋台は大混雑してたし、花火があがればヤンキーが騒ぎ、いい思い出が全然ない。
    今年は彼女が祭りに行きたいという前に釘を刺そうと思った。

    「今年は行かんぞ」
    「えー!絶対行くもん!」

    案の定、彼女は駄々をこね始めた。

    「屋台の焼きソバ食べたいもん。お好み焼きも食べるもん。りんご飴食べたいもん。ジャガバター食べたいもん!!」

    どんだけ食べる気だ。
    しかし、今回は僕も折れない。

    「俺はこっちの祭り、嫌いや。情緒ないやろ」
    「祭りに情緒もへったくれもあるか」
    「アホ、とにかく俺は行かんからな。友達と行けや」

    彼女が恨めしそうに俯いた。

    「友達と行っても、意味ないもん」
    「何でや。屋台のモン食うだけなら、友達とでいいやん」
    「違う!」
    「何が」
    「…せっかく可愛いの買ったのに」

    買った?可愛い?何?服?
    その時、僕は気づいた。

    「浴衣?」
    「…」
    「夏祭りに行きたいって毎年騒ぐのは、俺に浴衣見せたいから?」
    「…お祭りの時くらいしか、着れないじゃん」

    足をブラブラと揺らし、彼女が呟く。

    「兎の柄の、ピンクいの。せっかく買ったのに」

    ピンクの、兎柄の浴衣。きっと彼女に似合うだろう。
    だから毎年騒ぐのだ。浴衣を着たいから。僕に、浴衣姿を見せたいから。
    僕はため息をついた。

    「…分かった」
    「一緒に行ってくれるの?」
    「それが理由じゃしゃあないやん。俺以外と行っても、意味ないんやろ」

    彼女は背中に飛びついてきた。

    「帯は黒いの。金魚ついてるの」
    「そうかそうか」
    「髪飾りもお揃いなの。キラキラしてるの」
    「そりゃ楽しみやな。下駄買ったるわ」

    やった、と笑う彼女。意見が食い違った時は、いつもこっちが折れてしまう。
    甘やかしすぎるのもいかんなぁ、と思いつつも、この笑顔が見れるなら、してやれる事はしてやろうと思ってしまう。

    今年は僕が生まれた土地の祭りに彼女を連れて行こう。
    兎の浴衣だって、きっと向こうの祭りの方が似合うに決まってる。
    鴨川沿いを歩く浴衣姿の彼女を想像して、ちょっと顔がにやけてしまった。

    幸せだなあ。妄想だけど。

    眠い彼女。

    • 2011.06.06 Monday
    • 01:10
     眠い時の彼女はすぐに分かる。

    言葉が棒読みになる。語尾がのびる。「あー、この私ー芸能人好きー」とか。
    体温が急上昇する。熱でもあんのかと不安になる時もある。
    靴下を脱ぎ出す。手がグーになる。何故か本を何冊も本棚から持ってくる。

    やがて目をゴシゴシとこすり出す。
    でも、「もう寝な」と声をかけても、グズグズとなかなか寝ようとしない。意味がわからない。

    そして、僕の胸や背中に自分の額をグリグリと押し付けるように顔を埋める。
    この状態で放っておくと、いつの間にか静かに眠りにおちている。
    毛布をかけてやる。
    最近は暑いのかすぐに放り出す。でもこいつはすぐに体調を崩すから、根気よくかけてやる。
    しばらくすると大人しくなる。
    寝顔を見ていると、よく口をモグモグとさせているから、何か食べてる夢を見てるんだと思う。
    いつか寝言を聞いてみたいもんだ。

    幸せだなぁ。妄想だけど。

    プレゼントを期待する彼女。

    • 2011.05.22 Sunday
    • 20:57
     付き合った記念日、告白した記念日、初めて手を繋いだ記念日…。
    記念日を祝うのはカップルの楽しみと言うけれど、お互いそういう風習を何かダセエと思ってる僕達は、誕生日くらいしか祝い事をしない。

    「付き合って3ヶ月記念とか1年記念とか、何なの?お前らそんなにヒマなの?とか思っちゃうんだよね」
    「あー、分かるわ」
    「記念日でも祝わなきゃ間が持たないのかよって感じ」

    今日の彼女は機嫌が悪い。多分外が雨だから。
    機嫌が悪いと口も悪くなるのだ。非常に分かりやすい。

    「そんなワケで、私の誕生日が近いのですが」

    さっきまでブーブー言ってた口が、ふいにニヤリと笑みを浮かべた。

    「分かっとるわ。何が欲しいん」
    「当ててみて」
    「何か今日めんどくさいな、お前」
    「指輪欲しい」
    「答え言うの早いな」
    「これ、ここに載ってるの」

    彼女がファッション誌を広げて僕に見せた。

    そういえば、まだ彼女に指輪を贈った事がなかった。
    理由はちゃんとあるのだ。

    出会った時から彼女がずっと身につけている指輪があるのだ。
    聞けば、両親から贈られた指輪だと言う。
    「本当に?元彼から貰ったんじゃないの?」と意地の悪い友人は僕をからかうが、娘を溺愛しているあの両親の事だ。指輪を贈ったのは本当の事だろう。

    彼女がその指輪を大事にしているのは目に見えて分かった。
    親元を離れて上京した時、彼女を支えてくれたのはその指輪だったんだろう。
    僕は勝手に、その指輪の居場所を奪ってはいけないと思っていた。

    「でも、指輪ならお前いいの持ってるやん」
    「これ?」
    「うん。それ外したら、ご両親が悲しむんじゃない?」

    彼女はポカンとした顔で俺を見た。

    「そう思ってたから、プレゼントで指輪くれた事なかったの?」
    「うん」
    「両親に気を使って?」
    「気を使うのは当たり前やろ」
    「…バッカね〜!」

    頭をポンと叩かれた。
    そして彼女はこう言った。

    「あのね、指は10本あるんだよ?お父さんとお母さんから貰ったのは右手。で、あんたから貰ったのはこの指にする」

    彼女は、左手の薬指を指差した。
    僕の耳が熱く、そして赤くなるのを感じた。

    「ね?だからよろしくね」
    「…うん」

    彼女が帰った後、例のファッション誌を広げて、欲しがってる指輪がどこで売っているのかを確かめた。ついでに値段も。

    「…これ、ゼロ一個多いやん」

    そうなのだ。マメに記念日を祝わない分、誕生日は奮発してプレゼントを贈らないといけないのだ。
    彼女の左手の薬指を飾るのは僕しかいない。僕は腹を括った。
    明日は打ち合わせの帰りに三越に行ってくる。
    彼女の笑顔を思えば、安いものだ。安くはないけど。ゼロ一個多いけど。

    幸せだなぁ。妄想だけど。

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